急性頸部筋々膜症(=寝違え)
病態 頸肩背部の強い運動制限を伴う急性の痛みの代表原因に、「寝違え」がある。しかし同様 の病態にも、日中仕事をしているうちに次第に寝違えた感じがしてくることもある。これら 急性に生じた頸部の筋々膜痛を総称して、急性頸部筋々膜症とよぶ。 症状のメカニズムはあまり明らかでないが、何らかの原因で筋の短縮が生じたため、該当 筋を伸張させようとする動作で痛みを発するのだと思われる。すなわち筋の伸張による痛み である。 筋の短縮(過剰収縮)自体は鈍痛様であるが、筋の伸張痛では鋭い限局性の痛みを生ずる。
頸部神経根症
1)病態:頸部神経の根部における圧迫 ※硬膜管の中の脊髄から神経が枝分かれして椎間孔を 通って脊柱管から出ていく、その枝分かれした部分 を「神経根」とよぶ。
2)代表疾患 脱出した髄核による神経根圧迫→頸椎椎間板ヘルニア(30~40才代)、骨棘による神経根圧 迫→変形性頸椎症(40才以上)。 腰椎椎間板ヘルニア(20~30才代)
3)症状:頸部痛+上肢の知覚低下(デルマトームに従う)、筋力低下。 ※上肢痛は、神経根障害の症状ではなく、神経走行途中の絞扼で生ずる。 椎間板ヘルニアの際に、しばしば上肢が痛むのは、多くは筋緊張による神経絞扼障 害が合併した状態である。上肢の知覚低下と痛みは区別して考えること。
胸郭出口症候群
胸郭出口部における腕神経叢と鎖骨下動脈の絞扼障害。 頸肋症候群、(前)斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋(=過外転)症候群の4つに分類する。 胸郭出口症候群の大部分は、頸部外傷に瘢痕化した、頸部斜角筋により生ずるか、肥満・巨乳・ 加齢により肩甲帯が下垂することによって生ずるものが多い。 2.頸肩腕症状-6 症状:上肢の痛み、シビレ、ダルサなど。 ①上肢の痛みは、ピリピリ、ジリジリといっ た痛み。上肢症状は末梢神経分布に従う。 神経根症では、デルマトームに従った知覚鈍麻が 起こる。 ②鎖骨下動脈が圧迫されるので、上肢は冷え を伴うことが多い。 神経根症では動脈圧迫を起こさず、冷えは生じな い。 ③上肢挙上で増悪傾向 →三分間挙上テストRoos test 方法:両側の上肢を3分間挙上させ、疼痛やシビレ感など愁訴の誘発や増悪の有無をみる。 意義:胸郭出口症候群とくに肋鎖症候群時に陽性
頸肋症候群
第7頸椎横突起が延びて肋骨化した先天性奇 形。低頻度。上肢やその付け根の上肢帯の運動 や感覚を支配する腕神経叢は、頚神経から第8頚 神経と第1胸神経から形成されるが、頚肋がある 者は、第4頚神経から第8頚神経根から形成され ることが多い。腕神経叢の絞扼障害が生じる。 鎖骨下動脈は、圧迫される場合とされない場合 がある。
前)斜角筋症候群
斜角筋隙(前斜角筋、中斜角筋、第1肋骨上縁で囲 まれた部位)を腕神経叢と鎖骨下動脈が走行してい る。前斜角筋緊張のため、前斜角筋と中斜角筋の間 で、腕神経叢と鎖骨下動脈が圧迫された状態。 鎖骨下静脈は前斜角筋の前側を通るので、圧迫さ れることはない。
肋鎖症候群
鎖骨と第1肋骨の間隙から、鎖骨下動・静脈と腕神経 叢が出て上肢に枝を送っている。なんらかの原因により この間隙が狭くなり、上肢のシビレや痛み、冷えが出て いる病態。
過外転症候群(=小胸筋症候群)
肩関節外転時に小胸筋の烏口突起停止部で鎖骨下動・静脈が圧迫された状態になるもの。胸郭出口症候群の98% は、神経系圧迫の問題であって、血管圧 迫の病態はわずかだとする認識に変化